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ディスプレイ

最小の無人店舗:制作コラム

 忙しく制作に追われてしまうと、ふと「何を作っているんだろう?」と迷ってしまう事がまれにあります。小売の店員さんから、「邪魔だったからテスターだけ取り出して捨てた」「バックヤードに入れっぱなしでそのまま廃棄された」なんてお話を聞くとなおさらです。私たちはゴミを作っているんだろうか?見方によってはそうかもしれません。
 では、ディスプレイなどなくてもいいのかというと、やはり必要だから存在するのです。メーカーさんとお話ししていると、「卸からは販促物を強く求められる」「イメージでも店頭展開がないと、商談ができない」というお声を多く聞きます。特にニーズが強いのは、ドラッグストア、GMS、バラエティショップなどのセルフ売場です。極端な話、商品の前にセールスマンがいれば、POPやディスプレイなど必要ありません。実演販売などがそれに当たります。しかし現実は、膨大な販路に対して売り子を派遣する事はコスト的に厳しく、商品を置くだけで生活者に選んでもらわなければなりません。
しかも、一般販路の棚にはいろいろなメーカーの商品が所狭しと並べられています。さしずめ、棚自体がお祭りの屋台、ショッピングモール状態です。そんな棚において、隣のお店よりも良いものを売っているように見せなければ、商品を手に取ってもらうことすらかないません。

 売場の棚=ショッピングモールと考えると、私たちが作っているものは、「最も小さな無人店舗 」と言えます。購買を最終的に決定するのは値段やプロダクト、性能かもしれませんが、まず通りがかる生活者に対して、ブランド感や世界観をファサードで表現しながら、「ここにこんな商品ありますよ、どうぞどうぞお寄りください、お代は見てのお帰り」と無言で訴えている極小の店舗。

 そんなものを、私たちは作っています。

製作費について(ハード費その1・校正):制作コラム

前回に引き続き、ディスプレイの製作費についてお話しします。今回は「ハード費用」について。一度にまとめると長くなるため、段階ごとに区切っていきます。

■校正代
化粧品ディスプレイの制作において、必ず必要なのが「校正」です。文字の確認もさることながら、「タレント・モデルの顔色」「商品の色」「色玉の色」「モデル使用色の色」の調整が、非常にシビアだからです。プリントアウトやPDFの確認で終わらせてしまい、本番の印刷が仕上がってみたら全く色が違ったなんてことは少なくありません。特に化粧品は、販促物の色次第で店消が左右される事もありますので、重大です。
スケジュールが逼迫していない限り、校正は「本紙(本番と同じ紙質・厚さ)」「本加工(ニス・PP・プレスコートなどの表面加工)」の条件で、なおかつ2回は出力する事を勧めています。化粧品関連で、1度で色がバッチリ来る事はほとんどないからです。 できる限り本番に近い状態で確認しないと意味がありませんから、紙質・表面加工は必ず本番と同じ条件で行うことが必須です。紙の種類によってそもそも「白さ」に差があり(白自体が青っぽかったり、気味を帯びていたり)、加工のありなしでも相当色味が変わります。一般的には、PPをかけると5%ほど赤みが濃くなると言われています。
しかし、私たちも常にいろいろな紙を常備している訳ではありませんので、紙の手配、加工の手配に多少時間がかかります。「今日入稿したら明日出ますよね?」と言われる事が多くありますが、それはコート紙などの洋紙でチラシ印刷などの場合です。板紙の場合、工程が多く、紙も大きいので層簡単には行きません。
ディスプレイ用の板紙の場合、まず紙の手配に1日、校正刷りに1日、表面加工に1日見ていただけると助かります。。。。

 また、前述の通り、化粧品において一発OKはほとんどないので、色味の修正が必要になります。データそのままでNGということなので、元のデータの色味を加工しなければならず、実はこの技術も非常に重要なのです。印刷の出力機の性能というより、「データの加工技術」が化粧品ディスプレイの仕上がりを支えています。なかなか注目されませんが、データの加工技術が低い製版所に任せてしまうと、何回出しても色味が直りません。化粧品に慣れている製版所の選別が、隠れた必須条件でもあります。

最後に。
「なんで校正と同じ色が本番で出ないの?何のための校正?」
というご指摘を受ける事があります。おっしゃることは非常によくわかりますが、データは同じでも使用しているインク、出力機、印刷方法が平台校正機とオフセット印刷機では異なるため、どうしても少しのずれは生じてしまいます。この差を埋めるためには、「本機校正」というものも存在します。校正機ではなく、本番と同じ印刷機で数枚刷ってみるという手法です。しかし、印刷機を本番と同じ条件で稼働させますので、時間・コストにおいて校正機を遥かに上回ってしまうため、現実的ではありません。事実、私も選択肢としてはありますが、実際に本機校正が必要に迫られた事は一度もありません。
ですから、校正機出力でOKをいただいたものに極力近づけるため、弊社では担当営業による印刷立ち会いを基本条件にしております。校正出力と、本機印刷の差を少しでも縮めるため、営業が立ち会って最後の印刷調整をシビアに行っています。
極力ご要望の色味に近づける努力は絶えず行っておりますので、仕上がりの色味に関しては、少し温かい目でご判断いただけると大変光栄でございます...

製作費について(ソフト費):制作コラム

「んで、結局いくらなの?」
よくお客様から言われるフレーズです。紙製ディスプレイ什器は、他の印刷物よりも工程が多く、金額構成がとても複雑です。なるべく早く、正確な金額をお伝えしたいのですが、形が決まらなかったり、納品方法が決まらなかったりするとなかなか決め打ちできません。
では、具体的にどんな項目があるのか。今回は、意外と軽視されがちな「ソフト費」についてご説明します。

■デザイン費
まずはデザインにかかる費用です。ディスプレイのデザインは、ポスターのように平面だけではなく、形状も含めて立体的に考えなければならないため、高度なデザインスキルが必要です。二次元ではなく三次元でデザインをとらえ、どこから見ても成立するデザイン力が求められますので、どちらかというとプロダクトデザインに近いと思います。しかし、マス広告のデザイン費と比べるとかなり割安な金額設定がなされているのが実情です。一般的には、10万円〜50万円程度が相場のようです。

■設計費
 化粧品ディスプレイを制作する際、意外と知られていませんが、最も重要と言っても過言ではないのがこの設計です。まず、私が知る限り、化粧品ディスプレイのデザインと設計を、完全にひとりでこなせるスキルのある方はいません。弊社のように構造に詳しいデザイナーもいますが、フィニッシュの図面作成まではデザイナーひとりではできません。ですから、デザイナーのイメージをいかに具現化させるか、というところが設計の最初のポイントですが、デザインのイメージをそのまま立体にできる設計士は、意外と多くいない。「デザインそのままの形になってる」というだけで、当たり前のようですが、実はすごいことなのです。
また、量産する際、印刷の機械を何台使用するかでコストが大きく変わりますが、印刷台数を決定するのは、すべて設計次第です。同じ形のディスプレイを設計しても、図面は10人10色です。印刷台数の効率化を考慮しながら設計できるスキルも、非常に重要です。
最後に、「組立」です。ディスプレイの多くは組立てて納品するタイプですので、組立の工程は欠かせません。組立てるのは人です。機械ではありません。組立が難しければ難しいほど、人員と時間が必要になり、組立代が膨大な金額になってしまうことが少なくありません。
「途中で構造が変わり、納期の問題もあり最後の最後で組立代が跳ね上がって予算を超えてしまった!」よくあるトラブルです。この組立の難易度を決めるのも、設計です。前述の通り、設計士によって難易度が左右されます。「組立てやすさ」まで考えて図面を起こせるのが、本当に良い設計です。ただし、あまり簡易にしすぎると、「商品を乗せたら壊れた」などという大事故につながってしまうため、簡易性と強度をバランスよく考慮する必要があります。
このように、設計とひとくちに言っても、「デザイン再現度」「印刷台数」「組立てやすさ」「強度」の4要素を満たさなければならず、非常に高度なスキルが求められます。個人的にはデザインと同じか、ものによってはそれ以上の報酬が必要だと思います。
しかし、「設計費」という項目がまだまだ認知されておらず、対価をそのまま請求できないため、印刷費の中に含めてしまうことを余儀なくされているのが、現状でもあります。
ディスプレイ業界において、デザイナー、設計の認知度、フィーの向上は大きな課題です。

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